珍しく時間がとれたある日、俺は弟のモクバを連れて街を散歩に出ていた。
自分で言うのもなんだが俺は多忙だ。
多忙極まる。
あんなに仕事が忙しいのに、なんで高校生までやってるのか謎だと周囲にささやかれ続けているほどだ (「もっと謎なのは服のセンスだ」、とも言われているらしいがヒトの趣味に口を出すなと言いたい。殺されたいようだな、その無礼者は)。
ともあれ、休日の昼間に時間がとれたなど 実に 2ヶ月ぶりのことだった。
空いた時間の過ごし方もいろいろあるが、やはりここは弟のために使ってやるべきだろう。
あいつも小学生ながらに責任ある立場を奴なりに頑張っているし、俺と一緒にいたいと常日頃
願っているのも知っている。
そして現在、弟がどれだけ喜んでいるかは、飛び跳ねるような歩調と 向けられる笑顔から十分に伝わってきた。
ヒトの多い場所を避け、のどかな住宅街を 特に行き先を決めないまま歩いていた所に、コートのポケットの中の携帯が鳴った。
自由時間とはいえ、不測の事態が起きた時用に持ってきていたものだ。
ちょうど公園についたところだったので、俺はモクバに ちょっとそこで遊んでいろとうながした。
場合によっては この時間がもう終わってしまうかも、と悟ったモクバが一瞬悲しそうな目をしたが、すぐに笑ってうなずくと聞き分けよく公園へと走っていく。
以前ペガサスによって買収されかけた過去があるせいか、弟は会社での俺の立場を優先しなければと強く考えている様子だ。
それが、時折あわれに見えてならない。
普通あのトシの子供なら、考えずにいてよいことだろう。
そう言ってやりたいが・・・。
うまい言葉がみつからない。
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