―――― 初めてのことじゃない。
そうだ、初めてのことじゃ全然ない。
だから傷つくことなんてないはず。
でも初めてじゃないからって、
・・・・・・・何も感じないわけないじゃない?。
「・・・・・・・」
ため息がでた。
額を覆う前髪をかきあげて空を見上げる。
いつの間にか太陽は場所を移してしまっていて、空の色も青から赤みがかったグレーに変わっていた。
―――― 船に残っている必要なんてなかったのに。
落ち込んだ時は、みかん畑にひとり座り込むのがクセになってしまっていた。
故郷の村を思い出して、ちょっとホッとするから・・・・。
心の中で、何度も自問自答を繰り返している。
このスタイルは、ひとり 考えごとをする時のもの。
何かに迷ったときとか決断するとき。
いつも、頭の中で論議をする。
―――― この指針に間違いない?。
―――― この判断で大丈夫?。
イエスの私とノーの私で討論して、決定を出す。
楽天的な思考の私と慎重派の私と言い換えてもいい。
故意に作り出すふたつの人格というほど大げさではないけど、こうすると思考がまとまるのだ。
こと、サンジくん以外の案件では。
サンジくんに関してだけは、思考は堂堂巡り。
結論なんか出ないまま、ただ疲労する。
疲れる。つらくなる。
そしてため息が出る。
今、船には誰もいない。
ゴーイングメリー号はただ今 陸に停泊中。航海士の私も仕事御免だ。
ログがたまるまで2日間。
いつもどおりの自由行動。
サンジくんはいない。
―――― 初めてのことじゃない。
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