**ご注意**

女体化ものです。このハナシは裏SS『PreTTy BaD !!』の続きとなってます
←読まれていなくても支障はありません










































 ゾロに好感を持ってしまったのは、俺が女のコのカラダだったからだろうか。

 そいや(シャクにさわるが) アイツはまあモテる。俺ほどじゃないけど。


 アラバスタでビビちゃんが、
「"国を守るために戦ってくれてありがとう"って」と ご婦人からの手紙やらプレゼントを渡してたし (もちろん俺ももらったけどさ)。
 どっかの島に上陸した時、逆ナンされてるトコを目撃したこともある (それに対し「今迷ってるらしいんだが ここはドコだ?」とアホな切り返しをしていた)。


 なんであんなダサイ男がモテるんだ? と その頃はさっぱりわからなかったが・・・・・・、つまり、オンナノコにとってはどこか魅力的な部分が・・・・・・あるということ、なんだろう。

 昨日俺はレディのカラダだったから、どこかそーゆー乙女心 (?)があって、そのせいでハラマキ勃起男にどっきーんなコトになってしまった・・・んだろうな、うん。発見だ。オンナノコはハラマキ勃起男がちょっとスキ、と。





「・・・・・・・・・・・」
 ―――― ハラマキ勃起男なのに?。






 うーん。
 レディの世界はホントにミステリアスだ・・・。









So CuTe !!




「かわいーじゃないサンジくん!!」


 ・・・・・・てことは、ナミさんもハラマキ勃起男がちょっとスキ、なんだろうか・・・と不安になりつつも、手をあわせて はしゃいでるナミさんは やっぱりかわいくて、俺はとろーんと とろけそうなキモチになった。



「ええ。かわいらしいわね」


 そしてそして、アルカイックスマイルで俺をみつめてくれるロビンちゃんも、ハラマキ勃起男にちょっとラブ、なんだろうか・・・。


 まあそれはともかく、ナミさんもロビンちゃんも、俺の女の子姿にえらく喜んでくれた。










 衝撃の夜があけ、翌朝。

 珍しく、朝からきちんと起きてた剣士は すぐにチョッパーを呼んで俺のカラダを検診させた。

 問題の果実もあわせ、頼りになる船医はすぐ対処法を調べると請け負ってくれ、おそらくさほど問題はない、と おおまかな所見をもらした。
 多分 時間の経過で自然にもどるタイプだと思う、と。

 さすがに一生女の子になる覚悟はできてなかったから (だって俺は女の子ラブだからやっぱ口説きたいし)ホッとした。



 クルー達はというと それぞれにびっくりしてた。まりも剣士だけは事前に知ってたからひとり平然と。

 (ルフィのアホったれは「うまかったか? 俺も食ってみてぇ!」と木の実の方に注目してやがったが。果実はもちろんチョッパーが回収している。調査の後はもったいねぇけど廃棄だな)






 いつも通りのスーツで朝食の配膳を終えた後、俺は機嫌のいいナミさんに連れられ、日ごろエンのない女部屋へやってきて、そして冒頭に戻る。











「こーやって見ると、サンジくんていい条件なのよねー。金髪で青い目で。甘系たれ目で目鼻立ちぱっちりで。色白美白でとにかくやせてて。女の子のあこがれだわ!」

 ナミさんは仕立て職人みたく俺のカラダのサイズを測るように ぱたぱたさわりながら嘆息した。
 俺はやっぱり背が縮んでるみたいで、いつもよりナミさんの目線が近い。ってことは、170あるかないかくらいか?。


 ナミさんがほめてくれたルックスだが、俺がそれをちゃんと見たのは今が最初。女部屋の大きな鏡に映ってる自分。
 ゾロは「変わらない」と言ってたが、カオの印象もやっぱり様子が違ってた。全体はまあ一緒だが、当たり前だけどヒゲねぇし。

 客観的には悪くない・・・と思う。けど、自分のカオしたレディに対してどーにも食指なんて動かない。俺、ナルシストではないみたいだな。


「ナミさんロビンちゃんの美しさにはかないません〜〜〜
vvvv

 俺には目の前のふたりのがよっぽど魅力的だ。



「・・・そーしてるといつも通りね。変化したのは外見だけで、中身はそのままのようね」
 医者のチョッパーと同じ意見を麗しの考古学者さんも持ったらしい。

「・・・」
 俺自身も、そう思ってたんだが・・。

 眉を寄せてしまった俺に、機微にさといふたりはすぐ気づいてくれる。そしてどうしたの?と目でうながされたので、本当はチョッパーに報告しようとしたが(ゾロが横にいたので) できなかった相談をしてみることにした。


 やっぱ、女の子のキモチは女の子が一番分かるだろ?。
















「・・・・・・・・・・・で、きゅーんとなっちゃった、と」

 俺は昨夜の出来事を話した。
詳しく話す気はなかったのに、ふたりの誘導尋問にのせられて、あの男とそーゆーなりゆきになってしまったことまで口にのせてしまう。

 そして、ヤツの優しげなコトバだとか仕草だとかに、ついきゅーんとしちゃったことも。



 ―――― これ、オンナノコのカラダのせいですよね?。




 相談を受けたナミさんは、頭痛に苦しむようなしぐさでこめかみを押さえながら、
「そんなことしてたの・・・あんたら」
「つ・・・つい、好奇心で」


「でっでも最後までは・・っ。あまりに痛くてやめるってことになって―――― いやアレ、ハンパなく痛いですよね?!!」
「知るか!!!」
 ナミさんが真っ赤になってどなる。

 へ?!ってことは、ナミさんて――――

 ウソ!!と思わず驚いてしまう俺。
だって、こんなナイスバディだし、海賊専門の盗賊として荒くれ者との付き合いが多かったろうし当然モテてたろうし ――――すっげ意外だ。

「悪いっ!? とっといてんのよっ」
 健康的に焼けた肌をさらに赤くするナミさん。その横でしごく冷静に
「あなた理想無駄に高いから」
とロビンちゃんがつっこみをいれた。

「財力・学力・顔・カラダ・年齢・将来性!!!。納得できる相手が見つかってないだけよ!」
「初恋もまだというのはさすがに遅いわよ、航海士さん」
「えーっ」
「ロビンっっっ」

 い、意外だ・・・・っっっ。

 意外にウブなナミさんもステキだ〜〜
vv

 てか、ナミさんとロビンちゃんて、ふたりだとこんな風に話したりしてたんだなぁ。ロビンちゃんはそんな変わんないけど、ナミさんはなんか・・・年相応ってカンジがする。普段はやっぱ船を預かるリーダー的立場だし (船長がああだから)、キリッとしてて、それもまたイイんだけど・・・。




 姉妹みたい。




 うん、カワイイ。すげぇカワイイ。

 そんでもって、女の子の会話ってのもカワイイ。楽しい。

 女の子になれば、この仲間にいつでも入れてもらえるんだなぁ・・・vv
ナミさんがバージンなことなんて、かなりのトップシークレットじゃね? (別にバージンじゃないと吹聴してるわけでもないが)。






 ロビンちゃんとの口論が終わって、ナミさんはちょっとだけヘコんだカオでベッドに(行儀悪く)座り、
「しかし、女歴一日のサンジくんにも先こされるとは・・・」
 ボヤく。実は気にしてたんだろうか(外見がハデだからなぁ)。

「いや、俺も痛くてやめたからまだ」
 フォローのつもりで言ってみると、よけいニラまれた。




「でもそこでアッサリやめたなんて大したものね。あの剣士さん、ガッついてそうなのに」
 いいタイミングでロビンちゃんが話題を戻してくれる。
ガッついてそうって・・・。ま、確かに魔獣とか言われてるヤツだし、あんな勃ってたのに。

「でもゾロって意外に優しいんじゃない?。剣を持ってない限りは女に手、あげないし」
 ナミさんもつけ加える。おお、やっぱあいつ女の子に人気あんのか?。ふたりとも好感触っぽい。



「・・・・・・・・・・・・やさしい・・・」

 そいや、昨夜もおっぱじめる前に優しくする、みたいなことを言われた気がする。

 あいつって、やさしいのか。――――女の子限定で。



 そーゆーことだよな、男の時 (つまり昨日より前) にあいつに優しくされたことなんてねえもんなぁ。されてもキモイが。

 あいつは昨日は俺のこと、女の子として扱ってたのか・・だから俺の調子が狂うくらい優しくしたのか。で、俺がついどきーんとかしちまったと。


 おお、事件のつじつまがあったぜ、じっちゃん!!。


 はっきりしてすっきりだ。俺、もやもやしたの苦手なんだよな。














「じゃーーーんvvv






 ナミさんが俺を女部屋に招待してくれたのは、元はといえば着せ替えのためだった。
 せっかく女の子なんだからいつものスーツじゃ味気ない、服貸してあげるから、と。

 それには俺もノリノリだった。
ゾロと話した、『女の子になったらしたいこと』のひとつに服、というのがあったからだ。



 そりゃ着たい。着飾りたい。



 さすがにナミさんロビンちゃんが持ってるわけもないが、セーラー服だのナースだの婦警だの女医だのバニーだの魔女っコだの十二単だの・・・着せ替えというよりはコスプレしたかった。だって男じゃ着れねえじゃん!!。

 そんでそのオプションとしてアホなヤロウを誘惑してみたかったりもした。自分がいつも簡単に誘惑されてるから、どんなしぐさに男が弱いかってのは知ってるし。それを試してみたいなあ、とか。

 あの日、そんなことをゾロと言い合ってたんだっけ。
あいつは「よくそんなこと思いつくな。考えたこともねえ」とか俺様の深い探究心に感心してた。









 身長的にはロビンちゃんのが近いんだが、ナミさんの服を借りた。
やっぱミニスカ着たいし。
 で、下着は胸の大きさがふたりとは違いすぎるんで、ナミさんのサイズフリーのスポーツブラを借りて。
 鮮やかな空色が基調になってるAラインのワンピースをチョイスしてもらった。ひざ上スカートなんて人生初だ。すげ涼しい。靴はこのカッコだとサンダルかブーツがいいんだろうけど女物で合うのがないので裸足のまま。




「じゃーーーん
vvv。どうですかーー」
「カワイイカワイイ!!」

 ノリにのってる俺は、ふたりの前でくるっとまわって見せた。
バラティエで新しいコック服もらった時もやさぐれコック達の前で同じことした記憶がよみがえる。
俺・・・・・・・・・・・・成長してないのか?。


 航海の中で娯楽を手に入れた気分なのか、ナミさんは上機嫌に俺の髪をすいてセットしてくれる。

 ついでにとメイクまで始めてしまった。
コンセプトは『すっぴん風メイク』だそうで、あんまイジってない風に見えるメイクらしい(でも手間はかかってる)。

 下地クリームを塗って、薄くパウダータイプのファンデつけて(「私の色だとあわない〜くやしい〜」となぜかデコピンされた。ロビンちゃんのファンデを借りることになった。いろんな色があるんだな)。
 オレンジ入った薄ピンクのチークいれて、とここまではあまりモトと変わりがない。メヂカラってやつなのか、目は少しハデにまつ気カールさせてマスカラつけて。ベージュとピンクの間の色のリップもぬってくれた。そんで、てかてか光るグロスで仕上げ。


 姿見の中の俺。
ミニスカなのに素足、というのはアンバランスで、物足りないような逆にエロチックなような。
 『すっぴん風メイク』なだけあって、あまり化粧〜ってのじゃないのも気に入った。うん、さすが俺。レディでも男でもイケてるぜ!!。










 ―――― せっかくかわいくしてもらったんだからここはやっぱり――――








「ありがとうナミさんロビンちゃんっ、俺、さっそくオトしてきますっっ!!!」

 ふたりの手を交互にとって感謝の意を表す。


 ぎょ、としたナミさん。
「オトすってあんた、何を」

「決めてたんです!、俺、女の子になったら、ヤロウを誘惑してポイっと捨てようって!。ホントはどっかの島のしらねーヤロウがいいんですがこのさいゼイタク言えないんで、この船の誰かを誘惑してきますっっ じゃっ」


「サ、サンジくん・・・・」

 俺は最後に礼をすると、女部屋を後にした。







 そんな俺の背に向かって、
「ストレスたまってるんじゃないの?、彼」
「・・・でもちょっと分からなくもないかも。私も男になってサンジくんみたいにナンパしてみたいって思ったこと、あるわ・・・」
「・・・・・・・意外な一面ね。ふたりとも、ふだん抑圧されてるのかしら・・・」

 航海士さんと学者さんが心理学について しみじみ語ってたのは、もちろん聞こえなかったんだが。
















 地下の女部屋から上にあがる。のぼってきた太陽がまぶしい。
もう少ししたら昼食の準備をしなきゃいけないが、その前にひと誘惑しよう。




 誰にすっかな・・まあどーでもいーや、最初に会ったヤツにすっか。


 てくてくとハダシで甲板を歩くと、広くはない船の上、すぐにターゲットの姿を発見した。





 ―――― ほー、コイツか。




 ニヤリ。

 意図せずこみあげた笑みは、自分じゃみえないけど、きっとすげえ悪魔ちっくだろう。



















「おつかれ
vv

 作り声で(チクショウ簡単じゃねえか。男は楽な労力でいつもだまされてんだな・・・いいけど)、かわいく声をかけてみる。


 と、振り返ったそいつはぎょぎょっと目を丸くした。

「サンジっ なんてカッコしてんだお前っっ」

「かわいーだろ?」
 さっき女部屋でしたみたいに、くるっと回ってみせる。





 ウソップは、がぼーん、ってカンジのカオをした。





 甲板に腰をおとし、いつものウソップ工房でひとり なんか発明中のこいつ。
―――― をターゲットに定めた俺は、その斜め前くらいの位置に腰を下ろした。
女の子ずわりで。

 これ、男はマジできないんだぜ、痛くて。なんで、せっかくなので今のうちにやる。ついでにカワイイし。ミニスカワンピで素足のコがやったら、そりゃもう脚バッチリだし。


「見ててい?」
 いい?を少し短くして尋ねたら、「そ、そりゃいいけどよ・・」とドモりつつターゲット。


 ―――― おお、ビビってやがる。

 俺から離れたいみたいに上半身がひいてる。女の子にこーゆータイドのヤツっているんだよなぁ。得はねーぞそれ・・。向こうは「避けてる?。嫌われてるのかな?」って思っちまうだろうし。
 レディより男心に詳しい俺としては、これってミエミエで単にテレてるって分かるんだけどな。



 きゅうきょターゲットとなったウソップだが、なかなかわかりやすい反応に気分は上々だ。ウソップの手元を注目すると、やっぱり緊張しててぎこちなかった。いつもはもっと的確にはやく作業できるのに。

「ふーん、こーやって見ると、やっぱすごいなぁ〜」
 ウソップが俺を避けようとしてるのを知ってて身をのりだしてやる。
ヤツの手前の作業場を興味あるフリでのぞきこんだ形だが、近づく距離にまたウソップがのけぞる。磁石のSとSみたいに。



 
おっおもしれぇーーーっっ。


 俺が男で、しかも元は超オットコ前のサンジ様だと知っていながらも やっぱこんだけビビんだなあ〜。

 免疫なさすぎだぜ、コイツ〜〜。




 さりげなくなにげなく、発明品を見るのに夢中になってる様子を演じる。
そのせいで女の子座りしてる脚がちょっと無防備に開いちゃってるのも気づかない、そんな俺。演技派すぎるぜ月影先生。

 案の定、ウソップの視線が思わず、という言葉ピッタリに俺の脚にいく。


 確か故郷の村に幼馴染に毛のはえたような関係の(ようするにいまだいいお友達な)女の子がいるらしいが、ルフィいわく「お嬢様」だそうで。
 ナミさんタイプに全然なびかないってことは、こいつ清純派が好きなのかな、と内心算段をくむ (ちなみにナミさんが不純なわけではない。イメージだ、あくまで)。


 発明品からウソップに目をやった。

 あわてて、脚から俺に目線を戻すウソップ。目が合った瞬間を狙って、はにかむように笑って見せた。

「な、変じゃない?」

 変じゃねぇか?と言いたいのを言葉遣いをちょと矯正。めざせフェミニンお嬢様!!。

「な、なにがだよ」
 ウソップは内心『これはサンジだこれはサンジだ』と呪文を言い聞かせてるらしく、いつものウソップぽい受け応えにつとめている。動揺はバレバレだが。

「服とか。・・・・何も言ってくれないから」

 レディと会ったらまずカオとか服とかメイクとか髪とか、いろいろ褒めるトコあるだろーがよ!。俺は褒めるのがスキだが、褒められるのも大好きだ。

 不安そうにワンピースのすそをつかんでみる。こーゆー、ちょっとロリ入ったしぐさってのはどうだろう。おおっウソップにはストライクゾーンみてぇだな!。

「いっいや・・っ似合わなくはないっつーかかなり似合ってるぞ!。ミスJRとかなれなくもないかもってところか?!、シンプルだから、髪とか首になんかアクセントつけるともっといいかもな!!ハハハハ」
 最後につけた笑いが無意味だ。
てかJRってなんだ?。

 まあいい。

「良かった。アクセントか・・・どんなのがいいと思う?」
 嬉しそうに笑ってまた尋ねてみた。

「あー、そうだなあ、ネックレスなら、髪とか目の色もあるし、できるだけさりげないのがいいな。ハデなのつけるとケバくなっちまうだろ。ホラ、髪とかゴージャスだし、カオだちもはっきりしてるしさ。細めの銀のチェーンで、石もひとつふたつくらいで、シンプルなのがオススメだ。でも安いのだとおまえがつけたらかえって浮くから、ある程度値のはったヤツがいーだろーな、そういや――――」

 水を得た魚のようにしゃべくりはじめるウソップ。得意分野だと口数が増えるんだよな。てコトは、例のお嬢様にもウソと趣味のハナシばっかしてたんじゃないだろうか。そりゃ進展しねぇわ。



「アクセかあ、・・・・・・・いっこも持ってないな。コックって、そーゆーのあんまできないし」

 ふいに強めの風が吹く。
いつもなら気にしないが、セットしてもらった髪がみだれるのがイヤで後ろ頭に手をやった。それから少しスネたようにつぶやいてみる。
 俺だったらもうこの時点で、「じゃあなにかプレゼントするよ、オススメの店があるんだ、君に似合う」とか食いつくってのに。

 ウソップは困ったように、
「いや、コックでも、仕事以外の場ならいいじゃねえか」
 なんて俺の狙いをそれたところで懸命にフォローしていた。違うだろっつーの。











 ―――― 女の子になれたら。

 そりゃ男をオトしたい。

 そう思う俺だが。



 ―――― なんかこーゆーの、楽しいなぁ。


 女の子をくどこうとがんばるのもすごいスキなんだけど。それって、どうしたって俺のが立場低いもんな。それでいいんだけど。

 でも今はそれが逆転してて。
こいつをうまく操作して自分のいいようにしたいという支配欲とか。うまくいくよう試行錯誤アレコレしようという画策とか。自分の行動に逐一返される慣れてない反応とか。


 うーん、ハマりそうだ。



「俺に似合うようなの、プレゼントしてくれよ」

 通じそうにないのでちょっとストレートに水を向けてみる。ウソップになにかオゴレといったのはもちろんハジメテだ。仲間にタカったことなんかない。
 でも今は、そんなの余裕で許される気がする。つーか、オトすといえば貢がせてナンボだ、という思考が俺の中にあるので、なんとしてでもウソップに俺のために出費させたい。

 ニッコリ。と微笑む。
あからさまに動転して、さらに後ろに退きそうになるオーバーオールをつかまえて、その肩に手をのせた。
「え。え・・」
「な?」

「お、おう・・っ」
 思わず、なんだろう、こっくりとうなずいたその反応に気を良くした。





 俺は女の子のおねだりにはメチャクチャ弱くて。そーいやナミさんと初めて会ったときもフルコースの食事代まるまるもったし。
 ほかにも、数え切れないくらい、レディにはプレゼントしてきた。それって単純に喜んで欲しいってのもあるけど、もちろん下心もないわけじゃないから。



 ―――― 礼しなきゃな。


 お礼言われたり、礼代わりにチューとかエッチとかさせてくれたりすると嬉しいもんだもんな。


 向き合ってその肩に腕をまわしたので、ウソップのカオはけっこう近い。ビビってテンパってるトコはよく見るけど、赤くなってるコイツなんてめったに見ない。レアだ。


「サンキュ」

 もっとカオを近づけて、小さくささやいた。それから首を曲げて角度をずらして(鼻がジャマだし)その頬にキスをした。


 男にチューしたのなんかハジメテだ。多分。


 唇が触れた瞬間、びくくーーっとひきつった感触が伝わってきて、緊張してやがんなあ、とおかしくなった。女のコがこーゆー反応だとカワイイ以外のなにものでもないが、男がこうでも、初々しくてまあカワイイ。

 なんて、上機嫌にもう一度キスを落とそうとしたトコロで――――


 バキ
 バキっ



 後頭部に痛みが走った。

「ってえっ」
「うわっ」

 悲鳴は俺とウソップと同時。連続してモグラ叩きみたいに鈍器で殴られたのだ。





「あにすんだよクソ剣士っっ」
 俺とウソップの背後にずーんと立っているこいつが犯人だ。刀のサヤ部分(しかも鬼徹)でおもっきし殴りやがった。

「お前こそ何してんだっ!!んなめかしこんでっっ」
 めかしこむとはまた古い言い草を・・・思わず感心しちまいそうだが、怒りが先。

「俺の楽しみをジャマすんなっ。あとひと息だったのにっっ」
「またアホなことしてたんだな・・・とにかく来いっ」
「やめろよっ貢がせるまでやめねーぞっっっ」
「黙れアホ眉っ!!。―――― ウソップ、悪かったな、忘れろ」

 喧々囂々怒鳴りあってる間にも、俺はゾロに腕をひっぱられ、強制退場させられるハメとなった。






 ウソップが俺にオチたかは、謎のまま。





















 ウソップを誘惑してオトそうとしてたことが分かると、ゾロはあきれと怒りとがごっちゃになったようなカオで俺をニラんだ。今さら言うまでもないが、その形相はひじょーに凶悪だ。

 「なんでそうアホなんだ・・・・・・・・・」とつぶやいたのが聞こえて心底ムカつく。昨日こんなヤツにきゅーんとかしたのはやっぱ間違いだったに違いない。








 そろそろ昼食のしたくの時間、なので場所はキッチン。
空色のワンピースはルフィやチョッパーにも好評だったが、調理にはむかないのでいつものスーツに着替えた。肩が合わないのでジャケットはつけていない。

 椅子に斜めに腰掛けて、なんとなくハラマキの説教?を聞かされている俺。壁に背を預け腕組みしてこちらを見下ろす男はどうにも尊大だ。おまけに不機嫌だ。
「仲間オトしてどうすんだよ」
 声まで不機嫌。

「・・・海の上じゃそれ以外いねーだろーが」
 なぜか低気圧な男につきあってるのに飽きてきて、俺はおざなりに返事をした。
頭を今日の昼飯の段取りへとシフトする。準備のため立ち上がろうとする、と。


「―――― じゃあ知らねぇ男相手にやる気だったのか?」

 冷えた声。



「・・っ」
 ぎょっとした。

 殺気にほど近い空気に皮膚がしびれ、身体が硬直したのが分かった。
見上げた相手は、声に見合った冷たい目をしていた。


 ―――― 冷えてるといっても、コイツの目は。

氷のようというよりは、凍てついた炎のようだ。


「・・・・っ」
 ゾロがしたのは質問で、答えろと目が高圧的に促していた。そうです、と正直に言うのが怖い気がしたが、言わなくても伝わってしまったらしく ため息をつかれた。今度のはあきれてるんじゃない、怒りのためだ。

「別に悪いことじゃねえだろ?。遊びっつーか・・・せっかく女になったんだからってだけじゃねーか」
 内心いまいましく思いながらも言い訳を始める。俺の行動にケチをつけてきたこと、その迫力に一瞬たじろいでしまったこと、ちくしょうキマリ悪いにもほどがある。
「いつもと反対のことしてみたかっただけだ。ヤロウをからかって――――」

 ダン
壁が鳴った。

 ゾロ左拳が、俺の言葉を遮った。

「・・・・・・・・・っ」

「無駄に男をあおんじゃねえ。馬鹿が」




「筋力も体力も落ちてる。身長も体重も違う。その誤差ふくめて どんだけ戦闘力落ちてると思ってんだ」



「押さえ込まれたら蹴りでなんとかできるもんじゃねぇぞ。世間知らずにもホドがある。泣きついて途中でやめてもらえるなんて思うなよ。そんなことするヤツいるか」





 ―――― マジ怒ってる・・・。

 静かな口調は、なまじ怒鳴られるより迫力があった。一見冷静に見えるけど、キレてるんだと分かる。


 なんでこいつが怒るんだ?。なにをそんなに怒るんだ?。分からない。

 俺は本気でびっくりしていた。



 くだらない口げんかや剣を使う乱闘はよくしたけど、こいつは年中俺に怒ってるんだと思ってたけど、そんなのとは全然違う。ゾロは今までは俺に負の感情を持ってなかった。なのに





 レディには優しいはずじゃなかったのかよ・・・。


 男の時は向けられなかった怒り。
なんでそんな怒るんだ。昨日は、そうだ、昨日は――――


「お前、やめたじゃねえか・・・」

 ゾロを見ていたくなくて目を落とす。知らない間ににぎりしめていた手。のばしてはいないが爪のあとがくっきりと食いこんでいた。
 手の形は男の時とあまり変わらない。そのことになぜか安堵した。





 ――――『途中でやめてもらえるなんて思うなよ』


 ゾロはそう言って俺をなじった。でも、お前は

「・・・・・・・・・俺が痛がったら、すぐやめたじゃねぇかよ」



 嬉しかった。
こいつ優しいじゃん、なんて、ほだされるようにドキドキした。






 でもそんな純粋なものと一緒に、優越感があった。
そうだ、優越感。
ウソップに感じたのと同質の優越感が確かにあった。

 女の子だから何かをしてもらって当然、という、自分の方が上にいるというあさましい気持ち。

 浮かれてたのがウソみたいにヘコんできた。
こんなに叱られるほど悪いことしてないはずなのに。そんなつもり、なかったのに。



 気づくと視界にゾロのブーツが入った。
いつの間にか俺のすぐ前に立ってて、その身体が俺に近づいてくるのが分かってビクッと肩が硬直する。また殴られるかと思った。痛みが怖いというよりは、ゾロが怖い。嫌われるのが怖かった。


「俺とそこらの男を一緒にするな」
 声音は強い。けど、厳しくはない。



「お前がホンキでやめろっつったら俺はやめる」
 怒りの感情は消えていた。



「聖人君子なわけじゃねぇ。昨日だってホントはそのままヤッちまいたかった。でも、嫌がってたからしねぇ」
 目はまっすぐに、俺を見て。



「・・・お前が、嫌がったから」
 日に焼けた手が、おびえるなと なだめるように肩に置かれた。







「――――・・・」

 俺が嫌がったら

 ホンキで「やめろ」と言ったらそうしてくれるのは。




「・・・・・・・・仲間だからか?」


 どうしてそう口をついたのか、自分でもよく分からなかった。尋ねると、ゾロは少しだけ困ったような顔をして、それからうなずいた。

「・・・・・・・・・。ああ。・・・・・大事だ」








 落ち着かない。

 俺はぐずる子供みたいに視線を泳がせ言葉を捜す。
「・・・っ・・・今俺、レディのカラダなんだよ・・・」

「?、ああ、そうだな」
「だからそーゆーの言うのよせ・・・」
 イミもなく手をにぎったり開いたり。ああ、落ち着かない。




 どきどきする。







 きっと女の子のカラダだからだ。

 目の前の男は、悔しいがきっと魅力的なんだ。オンナノコにとって。

 だから今、この状態で無条件に甘いこと言われると、頭のどこかが勘違いを始めてしまいそうだった。


 落ち着かない。



 欲情じゃない高揚感。








 ――――エッチするぞ、って段になって女の子に嫌がられたことなんてない。
 だからよく分からない。
でも、自分が完全にその気になってたら、ハイそうですかってやめられるのかな。
 きっと俺はムリヤリなんてできないからやめると思う。でも、心のどっかで ついてないとかやってらんねーとか、少しはふてくされるだろう。


 ゾロはきっと、そーゆーのを俺に持ってない。
俺がやめて欲しいと思ったからやめた、と言ってくれた その言葉は疑いようがないほど真摯で。






 どきどきする。









「・・・・・・・・・・・・・・ウソップに謝る。あと、ほかのヤツにも・・あんなの、しねぇ」
 正直、未練はあったが。

 ウソップみたいな純真な人間をオトそうと画策するのは楽しかった。
それに、俺に言わせてもらえば たとえ見知らぬ男相手に同じことをして、万が一襲われたとしても きりぬけられる自信はある。確かに女の身体になった『違和感』が戦闘力に影響を与えるのは間違いないんだが。

 でも、自分を大事だと言ってくれた人間の気持ちを無視してまですることじゃないかと思い直す。
 珍しく殊勝な思いで俺はひとりごとのように、でももちろん前にいる男に聞こえるようにつぶやいた。恥ずかしいので ふてくされたガキみたいに下を向いて。


「おう。どうしてもしたくなったら俺にしろ」

「・・・・・・・・・・・・」
 予想外の返事に、思わず顔を上げる。

 目の前の男はふざけたことを真顔で言ってのけていた。冗談なのかそうじゃないのか区別がつかない。




「・・・・お前を?」

 オトすのか?。

 貢いでくれそうもない。そもそも金がなさそうだ。アホらしい。





 でも、


 きっとこいつが俺にオチたら。



 嬉しいんだろうな、と理屈でなく、感じた。








end

ウソップ放置。あわれ・・・
伊田くると
06 6 /1了




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