火村の研究室。
スプリングのいかれだしたソファの定位置にカップ片手に腰を下ろした私はふと尋ねてみた。
「火村、メイド喫茶って知ってるか?」
「・・・なんかニュースで見たことあるな。メイドの格好した店員がいるやつだろ?」
突然の私の質問に、眉をひそめつつも答えてくれる標準語の友人。知ってたのか、ちょっと意外だ。
「そうそう。『お帰りなさいませ、ご主人さまvv』て迎えてくれんねん」
「詳しいじゃねぇか」
「テレビで見ただけや!!。でな、執事喫茶って知ってるか?」
「いや。・・・・・・・まさか執事がいるのか?」
やっと書類から目を離して私に顔を向けた火村に力説する。
「そうやねん!。執事が迎えてくれる喫茶店なん。基本、メイド喫茶のコーヒーは高くないけどまずくて、執事はうまいんやけど
たっかいらしいで」
想定している客が男か女性かの違いだろうか。ちなみに執事喫茶は紅茶らしい。
「ふーん・・・。それがどうかしたのか?」
「それに比べると俺はぜいたく者やなー、てオチになるんやけど、・・・・・・・・・・・・・・・・分かるか?」
「わからん」
アッサリ答えられてしまった。少しは考えろよ。
―――― そんなうまくないインスタントやけど、メイドでも執事でもない火村がいれてくれる
ぬるいコーヒーがタダやってこと。
「・・・・・・・・・・これを口に出せたら苦労はないねんけどなぁ・・・・・・」
もしくは、火村も ほかのことには鋭い男なんだから察してくれてもいいのに。
ため息ついて、ほのかに湯気の残るコーヒーをすする俺を、長年の想い人は不思議そうに見ていた。
おわり
拍手お礼ぷち小話より。ふいに見つかったのでアップ。
07 12/10
|