「じゃあさ、<獄寺くんの好きな人>、のランキングは?」
なんでーつれねーの
ある日 俺は閃いた。
我が家になぜか下宿きめこんでる情報屋フゥ太。どんな情報も百発百中でランク付けできる能力を持っている少年なんだけど。
フゥ太の この力って……。
ものすごく………便利な能力じゃないだろうか。
いや、俺が今さら気付くまでもなく、フゥ太はマフィア達から ガンガン狙われてるわけだけどさ。
そーゆー物騒な目的以外にも このランキング能力は活用できるはず。ハルだって変な使い方してたし!。
そう!
京子ちゃんの好きな人ランキング!!
なんてのまで、できちゃうわけだ!!!
―――― 京子ちゃんの好きな相手。
そりゃ気になるよ。意外に京子ちゃんて、無邪気だけど読めないトコあるし。ま、俺が1位だなんて恐れ多い野望は持ってないけどさ。
でも今、何位かなーとか、知りたいじゃん。
本人に聞けるはずないし、ちょっとズルいのは分かるけど…でもやっぱり知りたい!!。
京子ちゃんの想いのランキングを知るために。
俺は勉強じゃ使わない脳みそを酷使し、さりげなーく フゥ太に京子ちゃんのランキングを調べさせる策を練った。
そして完成した作戦、題して!!
<木の葉を隠すなら森に>作戦!!
和気あいあい、みんなでいろんなランキングを調べつつ、さりげなく京子ちゃんのランキングを聞き出す!これだ!
というわけで。
俺・山本・獄寺くんという並中メンバー&フゥ太は今現在 俺の部屋にて のどかにおやつを食べていた。俺の作戦をしるよしもなく…。
そして、さりげない俺の誘導は見事成功し、いろんなランキングを調べる遊びがスタートした。
山本が並盛市の <うまいラーメン屋ランキング> を聞いたり、獄寺くんは予想がついたけど また <10代目の右腕にふさわしいランキング> のリベンジをしてる。
今回は天気の問題もなかったから、順当に(なのかな?)獄寺くんは1位だった (山本も同率1位だったけど)。ていうか俺はマフィアになる気はないんだってば。
ほかにも何個か質問をして、ちょろちょろ変な…いや恋愛がらみな質問を出してもあやしまれないなー、な空気。よし!! いくぞ!!。
とはいえ、いきなり京子ちゃんの名前を出すのは あからさますぎるから、ここは…。
「じゃあさ、<獄寺くんの好きな人>、のランキングは?」
「え」
急にそんな事に名前を出された獄寺くんは肩をあげて目を丸くした。
狼狽してる様子は ちょっと年相応にカワイイ。
けど、そこはやっぱり獄寺くんで、すぐに にかっと笑って
「調べなくてもわかりますよ!10代目です!!」
だって俺、10代目を心底尊敬してますから!!
握りこぶしで目をキラキラさせて獄寺くん。
以前自分がちびっこになった時もそれに気付かなかったくらい、俺が大きく見えてるみたいだしねこの人…。ある意味すごい盲目的だ。
ま、確かにこれは聞かなくても分かるよな…自惚れじゃなくやっぱり俺でしょ。獄寺くんには悪いけど、次に聞きたい京子ちゃんのランキングのための前フリだし。
フゥ太は「僕もツナ兄だと思う〜…」と もそもそつぶやきながらトランス状態に入った。
そして……
「「えぇっ!!??」」
ちょっとの間の後、おごそかな一本調子で言い渡された託宣に、俺と獄寺くんは声をあげた。
めったな事じゃ動じない山本すら、目をみはった。
だって。
1位・シャマル
「 「 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 」 」
ちなみに2位が俺。リボーンが3位。
フゥ太のランキング読み上げのほか、部屋は一切の音がしなくなった。時が止まったみたいに。
10位くらいのランキングになった頃、
「ちっ違うんです!!」
やっと我に返ったらしい獄寺くんが俺の前で弁解を始めた。
「違うんです!ホラ、またきっとアレだ!今日は雨だし!!」
「 「……」 」
外は見事な晴天だ。
ひとつの雲すらない。
窓のむこうを見上げ、山本は苦笑し 俺はひきつり笑いをした。
さらに焦った獄寺くんは顔を真っ赤にして、
「違うんです!とにかく このガキ間違ってます!!」
今度はフゥ太のせいにする。
指さされたフゥ太(いつの間にかいつもモードに戻ってる)は不満げに、
「僕のランキングは絶対だよぅ」
口をとがらせた。
「うるさいお前は黙ってろ!!違うんです10代目! あ!じゃあ大事な人ランキングにしてくださいよ!そしたら絶対10代目が一位ですから!!!」
ひ・必死だ…
正直そこまで俺が獄寺くんの1位になりたかったわけではないけど、当然なると思ってたのが はずれたのは なんか面白くない。
マフィアのボスになる気はないし、だから獄寺くんの1位じゃない事に文句なんかないはずだけど、この面白くなさはなんだろう。
獄寺くんも獄寺くんで、裏切りがバレてしまった窮地の部下さながらの必死の反応だ。
違うんですを連呼する彼を、いつもお気楽な山本が まーまーとなだめているが全く効果はない。
「違うんです!ホントに違うんです10代目!!」
いつもは怖そうなんだけど、泣きそうな顔をされてしまうと、なんだかイジメたくなる。
「違うって、フゥ太のランキングは外れることないんだから、シャマルが1位なんじゃないの」
ボソッと言い放つと、隣で本抱えてるフゥ太も うんうんと頷く。
「そ、そんな、違・・・」
「ハハ、確かにそーかもな。いーじゃねーかそれで」
「よくない!!」
山本のとりなしに涙目でかみつく獄寺くん。
自分の忠誠心に傷がついた気がするんだろーな。
現に俺もちょっとだけムっときちゃってるし。
獄寺くんはホントに泣きそうになりながら、
「…そりゃ、シャマルは・・・あいつは、ガキの頃の俺のたった一人の味方的なとこはありましたけど……」
「・・・・・・・・え」
そーなんだ。
それは初めて聞いた。
獄寺くんは あんまりイタリアでのことを言いたがらないし、家(城?)には良い思い出がないみたいだけど。
言い訳し始めた辺り、彼の中でシャマルが上位にくるのはアリなんだな…。
ただ俺を抜いて1位だった事だけが本人にも想定外なだけで。
そんなにシャマルを慕ってたなんて知らなかった。
獄寺くんは俺にはストレートに感情をみせてくるけど、基本ひねくれてるもんね。
「今は違うんです〜〜…」
肩を落としてしょんぼりしてる彼に、イジワルしてしまった事をちょっと後悔した。(ただ、フゥ太のランキングだって今のランキングなんだから、獄寺くんの主張は間違ってるんだろうけど)。
「うん、俺嬉しいから。ありがとう」
慰めたくなった。
この言葉でいいかな?。
ちゃんと伝わってる?。
獄寺くんが俺のこと大事に思ってくれてるのは、ランキングとかなしでもちゃんと分かるからさ。1番じゃなくっても、肉親以外にこんなに俺を思ってくれる人っていない。悲しいけど、少なくとも京子ちゃんより ずっと俺のこと考えてくれてるもんな。
「10代目〜〜〜。なんて広い心の持ち主なんだっっ 俺、一生ついてきます!!」
俺の手を握って とたんに元気になった彼。俺こそ、ズルいこと考えて、獄寺くんの心を探っちゃってごめんね、と心で反省した。
その後。
「よ 隼人」
「馴れ馴れしく話しかけんな!!ダメ医者!!ヘンタイ!!」
「なんでーつれねーの」
Drシャマルと獄寺くんの いつも通りなやりとりを見て、
「素直じゃないよね」
「な」
1位に対する態度じゃないよねぇ?
秘密を握ってる俺と山本は顔を見合わせて笑った。
この秘密を教えてあげたら、この女好きな医者が どんな顔するのかな なんて、思いながら。
おわり