「イイ格好だな、ゾロ」
やけに愉しげに、サンジが言った。
「何とか言ってみろよ?」
無言で睨むゾロを見下ろし、唇の端を引き上げて見せる。
揺ぎ無い手に握った銃の銃口を、ゾロの眉間に突きつけたまま。
「言い訳、聞いてやるぜ。尤も、今更何言おうが遺言だけどな」
タチがイイとは、お世辞にも言い難い…その癖視線を外す事を許さない引力めいたものを秘めた彼の笑みを睨みつけ、ゾロはギリっと奥歯を噛み締めた。
発端は、半時間程前に遡る。ログが溜まる迄の三日間、滞在していた島で、その間世話になっていた相手…の家族…に送って貰ったお陰で、出航予定時間迄に迷う事なく港…そうして船へと帰り着いたゾロを迎えたのは、妙に機嫌の良いサンジだった。
他の面々がまだ帰って来てなかった…のも一因だったのだろうが…。
常に無く友好的な様子で、歩み寄ってくるのに油断した。
曲りなりにも一応仲間…であるのみならず、ソレをやや逸脱した関係にある事も、警戒を抱かせない原因の一つであったのかも知れない。
後数歩…の距離で、ゾロの喉元に鼻先を寄せて。
「俺等と年の変わらないレディ…それも清楚な家事手伝いタイプってとこか?」
前触れも無く、呟く。
「?????」
「テメェの浮気相手」
不意の発言には、どこか憮然とした様子で、ゾロが反論も思い付かぬ内に、端的な声が付け足された。
そうして、ソレ呆気に取られている間に…。殺気もなく、前触れもなく、いっそニコヤカなまま唐突に。
ゾロは腹部に強烈な蹴りを食らって沈没を余儀なくされた。
大概無茶苦茶だと思っていたが、常の喧嘩の時では、ある程度『手加減』されていたらしい。 無防備な所へと加えられた不意討ちであったのもさる事ながら…。
そうなると、流石に、堪えて、不覚にも一瞬怯んだところへと、揺るがぬ銃口を突きつけられた。
「オマエが悪いんだぜ、『浮気しないっ』て」』約束した癖に…」
ふと真顔になって、サンジが言う。
「俺言ったよな?したければ浮気してイイって?その時に自分がなんて答えてるか、覚えてるか?オマエ」
いっそ真摯ですらある顔で。
「約束破ったら、相応に『礼』するとも言ったよな?俺、確か?」
確認というよりも、断定の言葉で告げられる事象に覚えがない訳ではなく、また…何があった訳でもないが幾分後ろめたかっただけに、反論の言葉も見当たらないままのゾロへと…。
「祈る時間位はやるよ、『礼』をする前に。俺は寛容だから]
そう続けて、『礼』を強調するかのように、銃口を顎で指し示す。
彼がどうしたのか、そうしてどうするつもりなのか、ハッキリと指し示す状況。
ソレを認め、それでも尚且つそうして、更に続く酷く愉しげな笑みに、ゾロが見つからないなりに反論じみた言葉を口にすべく…口を開きかけた時。
「サンジ〜っ飯〜っ」
お約束な叫び声と共に、キッチンにルフィが飛び込んで来た。
その一瞬で、ガラリとサンジが身に纏う空気が変わる…。
いつもの、軽薄で、真摯で、乱暴で、柔らかい…纏まりのない男へと、戻る。
「んん?何してるんだ?お前等」
彼等の様子を目に留め、酷く不思議そうに、ルフィが言う。
無理も無い、蹲るよう、壁際に追い詰められたゾロへと、サンジが銃口を向けているのだから、不思議に思わない方が可笑しい。
「なんでもねぇよ…それより、何か食わして欲しかったら、手洗って来い」
けれど、アッサリといつも通りの声音でサンジが言い。
『食べたい』と言う要求が簡単に通ったからだろう。比較的素直に応じ、ルフィは素直に飛び出して行く。
そうして、然程間を置かず、それと入れ違いに戻った他の面々…を見、サンジはゾロから銃口を逸らした。のみならず、何事もなかったかのようにそれをスーツの内側に収め。
いつも通りの様子で、浮かれきった声をナミ達へと投げかけ始める。
ただ、すれ違い様、
「今日のところは減点一で勘弁してやる」
そう、耳元に落とされた何故か愉しげにも聞こえる声に、ゾロはげっそりと肩を落とした。
彼は知らない、それに関するCountdownが0になった時が、自身の生に強制的に終止符が打たれるだろう日である事も…。
end
強くカッコいいサンジさん。
そこが好きだけど私にゃムリ(泣)
なので未来さまのサンジさんはホントあこがれなのですvv
伊田くると
ゾロ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こっえー(ドキドキ)」
03 11 28